アスタキサンチンは水産物から摂れる機能性成分

サケやカニ、エビなどの体内に存在している天然成分「アスタキサンチン」。緑黄色野菜に含まれる”ベータカロテン”や、トマトの色素成分”リコピン”などと同じく、カロテノイド(天然色素)のひとつに分類されています。

カロテノイドはどれも機能性成分として注目されていますが、その中でもアスタキサンチンは強力なパワーを持っています。近年になって、健康と美容に対する効果が脚光を浴びるようになり、サプリメントや化粧品に利用される機会も増えてきています。

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1.アスタキサンチンの効果とは?

アスタキサンチンに期待できるのは、次の3つの効果です。

  • 運動時の疲労を軽くする
  • 眼の疲労回復に役立つ
  • 皮脂の酸化をおさえて、肌の健康を保つ

以下、この3点について詳しく述べたいと思います。

運動時の疲労を軽くする

運動したときに発生する疲労には2種類あります。筋肉自体に疲れがたまって動けなくなるもの(末梢性疲労)と、体を動かす意欲が低下したために動けなくなるもの(中枢性疲労)です。

この2つのうち、アスタキサンチンは前者のタイプの筋肉疲労を軽減することが明らかになっています。

では、なぜ筋肉疲労が少なくなるのでしょうか。いろいろな説が考えられていますが、ひとつ分かっていることがあります。それは「アスタキサンチンを摂取していると、運動時のエネルギー源として脂質がよく使われるようになる」ということです。

人間が運動するときには、糖質と脂質がエネルギー源になります。このうち、運動前半に使われやすいのは糖質です。正確には、肝臓や筋肉に蓄えられている「グリコーゲン」という物質が糖質に変化して、運動時のエネルギー源になります。

しかし、グリコーゲンは体内にそれほど多くは貯蔵されていません。運動の種類と強度にもよりますが、1~2時間も運動を続ければグリコーゲンの大半は使われてしまいます。

グリコーゲンが減少しても、すぐに脂質がエネルギー源となるように切り替わればいいのですが、うまく切り替えできないときには一時的にエネルギーが枯渇した状態になります。エネルギー枯渇状態で運動を続けようとすると体に大きな負荷がかかり、それが筋肉疲労という形になって現れてきます。

しかし、アスタキサンチンを摂取することによって、最初から脂質をエネルギー源として使えるとしたら……? 当然、グリコーゲンの消費量をセーブできるようになります。そしてグリコーゲンが枯渇しないので、筋疲労も発生しにくくなるわけです。
(脂質は身体にたくさん貯蔵されているため、そう簡単には無くなりません)

アスタキサンチンは、激しいスポーツをする方によく利用されていますが、それは「負荷の強い運動でも長時間続けられる」というのが理由のひとつです。これも、グリコーゲンが無くなる前に脂質を使えるようになるからです。

ちなみに、エネルギー源として脂質が使われやすいということは「ダイエットに効果的」ということでもあります。(体脂肪が減りやすくなるため)。

ただし、アスタキサンチンを多く摂ったからといって、それだけで痩せることは絶対にありません。運動や食事制限と合わせなければ意味がないことを覚えておきましょう。この点はカルニチン(脂肪燃焼を助ける成分)と似たようなメカニズムですので、興味のある方はカルニチンのページを参考にしてみて下さい。

眼の疲労回復に役立つ

アスタキサンチンは、眼の疲れに対する効果も期待できる成分です。とくに、パソコンやスマホを長時間操作したときの「眼精疲労」を軽減すると言われています。

眼精疲労についてちょっとだけお話しすると……

眼精疲労を引きおこす原因のひとつは、眼のピントを合わせるときに使う筋肉(毛様体筋)が緊張しっぱなしになることです。パソコンやスマホを使っている間は、眼のピントがずっと同じような距離に合わさっています。そのため毛様体筋の緊張が続くことになり、眼精疲労が引き起こされます。

体全体をずっと同じ姿勢のまま動かさないでいると、首や肩、腰の筋肉に痛みが出てくるはずですが、それと似たような症状が眼の筋肉にも起こる……という感じです。

そして怖いのは、「眼の緊張状態が長いあいだ続くと、ピント調節機能そのものが低下する」ということです。そうなると、遠くを見ようと思ってもピントがうまく合わなくなるため、さらに目の疲れが深刻なものになっていきます。

しかし、アスタキサンチンを摂取すると、眼のピント調整力が改善するという実験結果が出ています。ある臨床試験では、被験者20名にアスタキサンチン(1日あたり6mg)を摂取してもらったところ、14日目以降に調節力が向上したという結果も得られています。

なぜアスタキサンチンがピント調整力を改善するのか、詳しいことはまだ判明していません。

しかし、ひとつはっきりしているのは「アスタキサンチンは眼の毛細血管にまで入り込んで、血液循環をスムーズにする働きがある」ということです。

血液が滞りなく流れれば、眼の筋肉にたまった老廃物を早く取り去ることができますし、酸素や栄養素をしっかり眼の奥に届けることもできるようになります。その結果、ピント調節機能が改善されて、眼の疲労も軽くなるという風に考えられています。

皮脂の酸化をおさえて、肌の健康を保つ

アスタキサンチンは、肌の酸化(皮脂の酸化)を抑えることにも一役買っています。

皮脂の酸化は、肌に大ダメージを与えます。炎症を発生させたり、ニキビや色素沈着の原因になったりもします。これに関わっているのは一重項酸素(いちじゅうこうさんそ)という活性酸素で、紫外線を浴びたときに肌で発生します。

アスタキサンチンはこの一重項酸素を消し去る働きがあり、それによって皮脂の酸化を防いでいます。

ただし、サプリメントよりも、アスタキサンチン配合化粧品のほうが、肌に対する効果は大きいようです。スキンケア目的でアスタキサンチンを利用するつもりなら、体の内部から(=サプリ)よりも外部から(=化粧品)を使うほうが効果的かもしれません。

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2.アスタキサンチンを補給するには

アスタキサンチンは、人体では生成できない物質です。そのため、「日々の食事やサプリメントから摂取する」というのが、唯一の補給手段になります。

では、どんな食べ物にアスタキサンチンが含まれているのかというと、それはサケやエビ、カニなどです。一言で言うなら「赤い色をした魚介類」です。

食生活にもよると思いますが、手軽にアスタキサンチンが摂れるのはサケです。切り身1切れに、約2mgのアスタキサンチンが含まれています。サケの種類や収穫時期によっても変わると思いますが、基本的には赤色の濃いもの���選ぶのがベターです。そのほうが、より多くのアスタキサンチンを摂ることができます。

サケのほかには、イクラやすじこもオススメの食材です。アスタキサンチンを含んでいるだけでなく、DHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富に含有しているため、イクラやすじこは「天然の健康カプセル」と表現されることもあります。

また、最近では「アスタキサンチン卵」というのも登場しています。これは、鶏の飼料にアスタキサンチンを入れることによって、鶏の生む卵にもアスタキサンチンが含まれるようになったものです。

3.アスタキサンチンのサプリメント

上記で述べたとおり、赤色の魚介類をしっかり食べれば、ある程度のアスタキサンチンは補給することができます。

しかし、アスタキサンチン特有の効果(運動時の疲労を軽くする、眼の疲労回復をうながすなど)を求めるなら、サプリメントを使うほうがベターです。サプリなら、臨床的に意味のあるアスタキサンチン摂取量(=1日あたり6mg)を確実に摂れるからです。

通常の食事だけだと、1日につき6mgも摂るのは難しいと考えて間違いありません(サケの切り身でさえ含有量は2mg程度なので)。

サプリメントの選び方

アスタキサンチンのサプリメントは、日本やアメリカのメーカーから販売されています。価格や含有量などの面から見ても、メーカーごとにそれほど大きな違いはありません。

ちなみに、エビやカニなどの魚介類にアレルギーがある方でも、サプリメントなら問題ありません。なぜなら、アスタキサンチンサプリの原料は魚介類ではないからです。原料に使われているのは、ヘマトコッカス(藻の一種)です。

ヘマトコッカス藻は、自らの体内でアスタキサンチンを生成できます。実は、エビやカニ、鮭などはヘマトコッカス藻をエサとして食べているからこそ、体内にアスタキサンチンが蓄えられて、鮮やかな赤色になるのです。
(言い替えれば、魚介類は自分自身でアスタキサンチンを作っているわけではない、ということ)

※ ひと昔前は、サプリメントによっては魚介類を原料にしているものもあったようです。今は無いと思いますが、念のため原材料をしっかり確認してから���うようにしましょう。

どれくらい摂取すればいい?

アスタキサンチンは必要摂取量や推奨摂取量が定められていない成分ですが、目安になるのは「1日あたり6mg」という量です。

アスタキサンチンの臨床試験において、「何らかの効果が確認されたときの最低量=6mg」という結果が多いため、この量がひとつの目安として考えられています。

ただ、これはあくまでも最低量です。体格や体質によっては、もう少し摂らないと効果が感じられない方もいるかもしれません。一日あたり6~12mgの範囲で使うぶんには過剰摂取にはならない、という専門家の見解もあるので、12mgを上限にしてサプリメントを利用するといいと思います。

副作用と過剰症について

アスタキサンチンのサプリは、使用量を守っていれば副作用の心配はほとんどありません。実際、安全性を確かめるために「通常の5倍量(つまり30mg)を4週間摂りつづける」という試験も行われていますが、健康上問題となるような副作用は報告されていません。

また、アスタキサンチンに限った話ではないですが、長期的にサプリメントを摂取する場合、過剰症が起こる成分かどうかも知っておく必要があります。世の中には、摂りすぎると健康に悪い影響が出る成分もあるからです(ビタミンAやビタミンDなど)。

しかし、アスタキサンチンはこの点でも大丈夫です。90日にわたってアスタキサンチンを摂取して、血中濃度がどう変化するか調べた実験があります(連日摂ると身体にどんどん蓄積して、血中濃度が高くなると予想されていた)。

結果的には、健康に被害が出るようなレベルに達することはありませんでした。そのため、長期にわたって摂取を続けても、体内に大量蓄積する可能性はないと考えられています。

※ 先に述べた使用量目安(一日あたり6~12mg)からは逸脱しないほうが無難です。

摂取タイミングはけっこう重要!

アスタキサンチンは油に溶けやすい「脂溶性」の成分なので、食事に含まれる油分と一緒に摂ると、体内に吸収されやすくなります。その反面、空腹時には吸収率が落ちるという特徴もあります。このことを考えると、摂取タイミングとしては食後がベストということになります。

また、アスタキサンチンの血中濃度は、摂取してから6~12時間にピークを迎えます。言い換えると、アスタキサンチンの効果が一番発揮されるのは、サプリを摂ってから6~12時間後ということです。

たとえば、アスタキサンチンを朝ごはんに合わせて摂ると、お昼から夕方にかけて血中濃度が上昇します。日中激しい運動をする方、仕事でパソコンを長時間使う方などは朝食のタイミングで摂るようにすれば、日中の疲労軽減につながります。

また、夕食後にアスタキサンチンを摂ると、寝ている間にアスタキサンチンの血中濃度がピークに達するので、睡眠中の疲労回復をうながすことになります。

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サプリメントを併用するときに気をつけたいこと

アスタキサンチンは、「特定の」サプリメントと併用するときには摂取タイミングを分けたほうが無難です。「特定の」というのは何かというと、それはカロテノイドを含んでいるサプリメントです。

カロテノイドは野菜や果物に含まれる天然色素の総称で、ベータカロチンやリコピンなどが有名です。アスタキサンチンもカロテノイドに属しています。

そして実は、カロテノイドに属している物質同士は、お互いの吸収の邪魔になります。つまり、同時に摂るとサプリメントの効果が半減してしまうのです。

そのため、アスタキサンチンのサプリを使うときは、ベータカロチンやリコピンとは摂取タイミングをずらすようにしましょう。
(たとえば片方は朝食後、もう片方は夕食後にする)

● 参考:カルテノイドに属する成分一覧

  • アスタキサンチン
  • ベータカロチン
  • リコピン
  • ルテイン
  • ゼアキサンチン

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