カルニチンは脂肪燃焼に欠かせない成分
カルニチンは、脂肪燃焼の仕掛け人とも呼ばれる成分です。脂肪を燃やしてエネルギーを作るときに欠かせない物質で、現在そのダイエット効果が注目を集めています。
日本では、50年以上のあいだ心臓病に対してカルニチンが用いられてきましたが、2002年に食品として認可されたためサプリメントの形で摂取できるようになりました。
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人間の体内で脂肪が燃えるときには、コエンザイムQ10や共益リノール酸などさまざまな物質が関わっていますが、その中でもカルニチンの注目度は群を抜いています。
なぜ注目されているのかいうと、その理由は「カルニチンが無ければ脂肪を燃やすことが全くできなくなるから」です。体脂肪を落とすために有酸素運動や食事制限をしている方は多いと思いますが、体内のカルニチンが不足していれば、思うように脂肪は燃焼してくれないのです。
なぜカルニチンが必要なのか、それは脂肪が燃焼するときの流れを見てみると分かります。
人間の体内にある脂肪は、中性脂肪という形でたくわえられています。そして、必要に応じて中性脂肪を分解するこ��によって、人間は活動エネルギーを生み出しています。エネルギーが発生する過程で、脂肪は燃やされて無くなります。これが一般的に言われている「脂肪燃焼」の意味です。
このプロセスをもう少し詳しく表すと、次のようになります。
STEP1.身体にたまっている中性脂肪が、遊離脂肪酸に分解される
STEP2.遊離脂肪酸が血液に溶けこんで、体内のさまざまな細胞まで流れていく
STEP3.細胞内のミトコンドリアという器官に遊離脂肪酸が取りこまれる(ここでカルニチンが必要になる)
STEP4.遊離脂肪酸が燃焼して、エネルギーが生じる
ここでポイントになるのは、ミトコンドリアという器官です。ミトコンドリアは「脂肪の焼却炉」と呼ばれることもある器官で、その中に遊離脂肪酸が入りこんだ後に、よくやく燃焼が始まります。
見方を変えれば、ミトコンドリアの中に遊離脂肪酸が入りこめなければ脂肪燃焼は完了しない!ということなのですが……困ったことに遊離脂肪酸は単独ではミトコンドリアの中に入っていけないのです。
ミトコンドリアに侵入できなかった遊離脂肪酸は、数時間のあいだは血液中をただよっていますが、やがて元の中性脂肪に戻ってしまいます。せっかく脂肪を燃やす手前まで行ったのに逆戻りというのは、とてももったいないですよね。
しかし、カルニチンが体内にたくさんあれば大丈夫です。カルニチンは遊離脂肪酸と結合することによって、自分自身もミトコンドリアの中に入っていきます。そして、その後でカルニチンと遊離脂肪酸は引き離されて、遊離脂肪酸だけが燃やされることになります。
カルニチンが「脂肪の運び屋」と呼ばれているのは上記の働きがあるからですが、この働きは他の栄養素では代用できません。つまり、脂肪を燃焼させるためにカルニチンは必要不可欠な存在なのです。
カルニチンが脂肪燃焼に欠かせないなら、サプリメントでカルニチンをたくさん摂取すれば、それだけで脂肪がどんどん燃えてくれるのでしょうか?
残念ながら、答えはNOです。なぜなら、脂肪を燃焼させるときにはカルニチン以外にも必要となるものがあるからです。それが欠けていたら、いくらカルニチンをたくさん摂っても脂肪は無くなりません。
すでに述べたことの繰り返しになりますが、脂肪燃焼の第一ステップは、体内の中性脂肪が遊離脂肪酸に分解されることです。しかし、そもそも何がきっかけで遊離脂肪酸への分解がスタートするのでしょうか。
その答えは、運動や食事制限によって「摂取カロリーよりも消費カロリーが大きくなること」です。この状態になれば、足りない分のエネルギーは自分の体内で作り出さないといけないので、脂肪を燃やしてエネルギーに変えるプロセスが始まります。
その反対に、摂取カロリーが充分に足りていて消費カロリーよりも多ければ、そもそも脂肪をエネルギーに変える必要がありません。この状態では、どんなにカルニチンを摂ったとしても脂肪は燃えてくれません。
ということで、「カルニチンをダイエットに役立てよう!」と思ったとしても、結局は運動や食事制限からは逃れられないのです。飲むだけで痩せられるならどんなに良かったことか……でも、現実はそうじゃないので受け入れなきゃですね……。
カルニチンは人間の体内で生成される物質です。そのため、深刻なカルニチン不足状態になる可能性はほとんどありません(先天的な欠乏症は除きます)。
ただし、ひとつ覚えておきたいことがあります。それは「体内のカルニチン生成量は年齢とともに変化する」ということ。その量のピークは20代ですが、その後は年齢が増えるにしたがって生成量は減少していきます。たとえば、40代になると20代のころの半分程度になってしまいます。
「若いころよりも太りやすくなった……」というのは多くの方に共通する悩みだと思いますが、カルニチンが足りていないことが原因になっている可能性は高いです。
先ほどカルニチンだけ摂っても痩せない!と述べましたが、不足している分をしっかり補うことには意味があります。「運動もしてるし食事にも気をつけてるのに、なかなか体重が減らない」というときには、カルニチンをしっかり摂ってみてください。それまで停滞していたダイエットが一気に加速するかもしれません。
あとで詳しく述べますが、カルニチンは日々の食事から摂れますし、サプリメントでも手軽に補給できます。
ちなみに、加齢の影響でカルニチンが減ってしまう理由はまだよく分かっていません。ただし、運動不足のせいで全身の筋肉量が少なくなることが関係していると言われています。カルニチンは筋肉中に多く存在しているので、筋肉量が減ればその分だけ体内のカルニチンも少なくなるのです。
定期的に運動する習慣がないと、筋肉量は年1%ずつ減っていきます。年齢に負けずに体内のカルニチン量を保つためには、無理のない範囲で筋力トレーニングをするのも大切なことです。
カルニチンは普段の食事から摂取することが可能です。とくに動物の赤身肉にはカルニチンが豊富に含まれています。
次のグラフは、食品100gあたりのカルニチン含有量をまとめたものです。
(※ 代表的な食べ物にしぼって記載してしています)
ジンギスカンに使われる羊肉(ラムやマトン)は、カルニチンをもっとも多く含む食材です。ただ、日常的に羊肉を食べている方はあまり多くないはずです。日本人の食生活を考えると、カルニチンを摂りやすいのは牛肉や豚肉ということになると思います。
また、肉類以外にはカルニチンをたくさん摂れる食材はなさそうですが、しいて言えば魚介類は間接的にカルニチンを増やすことにつながるのでオススメの食材です。魚介類にはアミノ酸の一種である「リジン」と「メチオニン」が多く含まれていて、この2つの栄養素は人間の体内で合成されてカルニチンに変化します。
ただ、人によってはリジンとメチオニンを結合させるための酵素(カルニチン合成酵素)が不足していることもあります。やはり一番確実なのは、赤身肉をしっかり食べること!と言えそうです。
ちなみに日本人の場合、一日あたり80mgくらいのカルニチンを食事から摂っていると言われています。この量をしっかり確保していれば、体内のカルニチンが欠乏する可能性はほとんどありません。
※ カルニチンが多く含まれている肉類は、言うまでもなく高カロリーです。そのため、「カルニチンをしっかり摂るために肉をたくさん食べる」というのはダイエットにとって逆効果になることがほとんどです。
摂取カロリーを抑えつつカルニチンをしっかり補給したいとなると、サプリメントを使うのが一番と思います。いろいろなメ���カーから販売されている中で、次の2つはコストパフォーマンスに優れているのでオススメです。
カルニチンは湿気をとても吸いやすく、品質低下が起こりやすい成分です。その点から見ると、ドクターズベストのものはフマル酸塩結合タイプなので良いと思います(カルニチンとフマル酸塩が結合していると、吸湿性が抑えられる)。
ちなみに、フマル酸塩はそれ自体が脂肪燃焼に関わっている成分です。そのため、ダイエット目的でカルニチンサプリを使うなら、フマル酸塩タイプのカルニチンのほうが優れていると言えます。
カルニチンは、少しくらいなら摂りすぎたとしても体の外に排出されるので、摂取量に神経質になる必要はありません。
ただし、摂取上限の目安は厚生労働省によって定められています。その量は、一日あたり1000mgです。これは体格や性別を考慮していないざっくりとした値ですが、一応目安値として覚えておくいいと思います。
ちなみにアメリカの基準では、体重1kgにつき 20mg/日というのが摂取上限になっています。体重50kgなら 1000mg/日となるので、日本の基準と一致します。
食事だけならカルニチンの摂取上限にひっかかる可能性はゼロですが、サプリメントを使うと上限にすぐ到達してしまうので、飲みすぎは禁物です。
カルニチンを摂取すると、下痢や腹痛などの軽微な副作用が起こることがありますが、重大な副作用が起きたという報告は今まで出ていません。
しかし、「カルニチンは動脈硬化のリスクを高めるかもしれない」という論文が発表されていることは少し懸念材料かもしれません。人間の消化管に存在している細菌がカルニチンをエサにして増えて、それが動脈硬化を引きおこすリスクになる、という話らしいです。
まだ動物実験によって危険性が示唆された段階なので、正確な情報が分かるまでには長期の調査研究が必要とのことですが、サプリメントでカルニチンを摂りすぎるのは避けたほうが賢明と言えそうです。先に述べた「1日1000mgまで」という量はかならず順守するようにしましょう!