ビオチンは皮膚の健康に欠かせないビタミン
ビタミンB群のひとつである「ビオチン」。元々あまり知名度の高い栄養素ではありませんでしたが、肌の健康を保つために欠かせない成分として、次第に注目を集めるようになりました。
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ビオチンに期待されているのは、アレルギー症状を軽減する効果です。ビオチンの作用のひとつに、「ヒスタミンが体内で過剰生成されるのを防ぐ」というのがあり、これがアレルギーを和らげるのに一役買っていると考えられています。
ヒスタミンは、脳を覚醒する作用があるのでとても大切な物質です。しかしその反面、体に���症を引き起こしたりアレルギー症状の原因になったりすることもあり、厄介な物質とも言えます。何らかの理由のせいでヒスタミンが過剰分泌すると、花粉症やアレルギー性鼻炎なども起きやすくなります。
しかし、ビオチンにはヒスタミンの量を調整する働きがあります。そのため体内にビオチンが充分にあれば、炎症を軽くしたりアレルギー症状を和らげたりすることができる、というわけです。
(※ 正確なメカニズムは今のところ判明していません)
最近では、ビオチンとアトピー性皮膚炎の関連性も注目されています。
アトピー性皮膚炎にかかっている方の多くは、血液ビオチン濃度が通常の半分にまで下がっているという調査結果が出ています。そして、ビオチンを摂取することによって皮膚炎が改善に向かうケースも報告されています。
足りないぶんのビオチンを補っても症状が軽くなるとは限りませんが、ビオチンがアトピー性皮膚炎に何らかの形で関係しているのは、ほぼ確実と言えるようです。
皮膚炎まではいかなくても、体内のビオチンが不足すると肌トラブルの原因になります。とくに肌が乾燥したり赤くなったり、痒みが発生したりといった症状が起きやすくなります。
見方を変えると「ビオチンが充分にあれば、きれいな肌を保つことにつながる」とも言えることから、肌の健康を守るためにビオチンを利用するケースも増えてきています。
アメリカでは、美容目的でビオチンのサプリメントを摂っている人が多くいますが、最近は日本でもビオチンサプリが人気を集めているようです。
ビオチン不足が続いたときに現れやすいのは、次の症状です。
- 肌トラブ��が起きやすくなる(乾燥、痒み、赤くなるなど)
- 髪の毛のトラブルが起きやすくなる(白髪、抜け毛)
- 疲労を感じやすくなる
一言で表すと「肌と髪に悪影響が出る」という感じです。意外と多いのは頭皮に対する影響です。最近では、頭皮に発生しやすい脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とビオチン不足の関連性も指摘もされています。
また、ビオチンは体内のエネルギー産生にも関わっています。具体的には、糖質やタンパク質、脂質がエネルギーになるときの代謝を助けます。ビオチンが不足するとこの代謝がスムーズに進まなくなるため、エネルギーがうまく産生されません。その結果、体が疲れやすくなります。
先天的なビオチン欠乏を除けば、深刻な欠乏症が現れることはまずありません。ただし、欠乏症とまではいかなくても、慢性的にビオチン不足におちいっている人は多いと言われています。
なぜ体内のビオチンが不足するのかというと、それは「腸内環境が良くない」というのが一番の原因です。人間の身体の中では、実は腸内細菌がビオチンを作り出しています。しかし、細菌が住み着いている腸内の環境が悪くなると、ビオチンをうまく作り出せなくなるのです。
ちなみに腸内環境が悪いというのは、一言で表すと「悪玉菌が多い状態」のことです。人間の腸には100兆個の細菌が住み着いていて、それらは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分けられます。そして、そのバランスは、
- 善玉菌 20%
- 悪玉菌 10%
- 日和見菌 70%
が理想と言われています。
しかし、現代人の腸内細菌は理想とかけ離れていて、悪玉菌が優勢になっている人も少なくありません。とくに、30代になったころから腸内環境は急速に悪くなっていきます。この年代になって肌や髪にトラブルが起きるようになったら、腸内環境が悪化してビオチン不足になっている可能性も否定できません。
今では珍しいケースですが、生の卵白を食べ続けるとビオチン欠乏状態になる可能性があります。
これは、生の卵白に含まれるアビジンという物質が、人間の体内でビオチンと結合するせいで起こります。両者が結合してしまうと、ビオチンは本来の働きを果たせなくなって、欠乏状態が引き起こされるのです。
ただ、これは生の卵白を大量に摂り続けたときに起きる症状です。生卵1~2個を毎日食べる程度なら大きな問題は起きません。
何か特別な理由があって生卵を大量に食べている方は、サプリメント(あとで詳しく述べます)を利用してビオチン欠乏を防ぐようにするのが賢明です。
ビオチンは、豆類に比較的多く含まれています。その中でも豆腐や納豆、豆乳などの大豆製品は、手軽にビオチンを摂れる食材なので積極的に利用したいところです。
豆類以上にビオチンを含んでいるのは果実類(アーモンドなど)です。小腹がすいたときにアーモンドやピーナッツを食べるのもいいかもしれません。ただし果実類は高カロリーなので、食べすぎないほうが無難です。
ちなみに、ビオチンを豊富に含む食材No.1は「レバー」です。とくに鶏レバーにはビオチンがたくさん含まれています。
しかし、レバーの食べすぎには注意が必要です。レバーにはビタミンAが大量に含まれているからです。ビタミンAは人間の体内に長くとどまる栄養素なので、過剰摂取すると健康に悪影響が出やすいのです(吐き気や頭痛、睡眠障害など)。
たまに焼き鳥などでレバーを食べるぶんには問題ありませんが、毎日たくさん食べるのは避けるようにしましょう。
そのほかには、鶏卵や一部の魚介類にもビオチンが含まれています。また、野菜だとモロヘイヤやブロッコリーがオススメの食材です。
代表的な食材について、ビオチンの含有量を調べました。
● 可食部100gあたりのビオチン含有量(グラフ)
※ 1000μg(マイクログラム)=1mg(ミリグラム)
● 可食部100gあたりのビオチン含有量(表:食材別)
種類 | 食品名 | ビオチン含有量 (μg) |
---|---|---|
肉類 | 鶏レバー | 232.4 |
豚レバー | 79.6 | |
種実類 | 落花生 | 92.3 |
ヒマワリの種 | 80.1 | |
アーモンド | 61.6 | |
カシューナッツ | 19.0 | |
かぼちゃ | 12.9 | |
豆類 | 大豆 | 28.5 |
納豆 | 18.2 | |
えんどう豆 | 16.0 | |
そらまめ | 12.5 | |
あずき | 9.6 | |
豆乳 | 3.9 | |
木綿豆腐 | 3.8 | |
卵類 | 鶏卵 | 25.0 |
野菜類 | モロヘイヤ | 13.6 |
ブロッコリー | 9.3 | |
ほうれんそう | 2.9 | |
乳類 | ヨーグルト | 2.5 |
牛乳 | 1.8 |
摂取量の目安は「50ug」
ビオチンは摂取基準量が定められていない栄養素です。ただし、一応目安値は設定されていて、その量は一日あたり「成人男性:50μg、成人女性:50μg」です。
(※ 妊婦は2μg、授乳婦は5μgをプラスします)
かたよった食生活をしていない限り、毎日50μgのビオチンを摂るのは難しくないはずです。もし心配なら、豆腐や豆乳などの大豆製品を多めに食べれば解決します。
ただし、目安量をしっかり摂ったからといって、それだけで何か効果が出るわけではありません。あくまでも「健康のためにこのくらいは摂りましょう」���いう量でしかないからです。
炎症を抑える効果やアレルギー軽減の効果をビオチンに求めるなら、サプリメントを使うのが第一の選択肢になります(食事から摂れる量だけでは足りないため)。
本当のところは腸内環境を改善して、ビオチンをしっかり産生できるようにするのが一番です。食品から摂れるビオチン量が50~100μg程度なのに対して、腸内細菌が生み出す量は20mg以上。実に数十倍の差があります。
しかし、腸内環境は長年の生活習慣が積みかさなって構築されます。裏を返せば「改善するときにもそれ相応の時間がかかる」ということです。つまり、簡単には体内のビオチン量は増えてくれないのです。
そう考えると、「サプリメントを利用して体内のビオチンを増やす」というのが、一番確実な方法と言えます(少なくとも短期的には)。
SOLARAY(ソラレイ)のサプリが良いかも
ビオチンのサプリメントは海外(アメリカ)では知名度が高いのですが、日本ではそうでもありません。そのためか、国内メーカーのビオチンサプリは今のところ存在しません。
ということで、ビオチンを補給するならアメリカのメーカーのサプリを使うことになると思います。
どのメーカーでも価格的には大きな違いはありませんが、特徴はいくつかあります。
たとえば、カプセルの大きさが一番小粒なのはドクターズベストのビオチンです。アメリカのメーカーのサプリには、カプセルが大きすぎて飲むのが苦痛になるものもありますが、ドクターズベストのビオチンならその心配はまずありません。
ただ、個人的に一番オススメなのはソラレイ(SOLARAY)のビオチンです。その理由は「タイムリリース加工がされているから」です。この加工がされているサプリメントは、体の中���カプセルがゆっくり溶けるようになります。
ビオチンは水溶性の物質です。つまり、体内の水分に溶けやすい物質なのですが、その性質のため体内に長時間とどまることができません。トイレに行ったときにかならず排出されてしまうからです。
見方を変えると「一度にビオチンを大量に摂っても、使われないまま排出される可能性が高い」ということです。
しかし、タイムリリース加工がしてあればカプセルがゆっくり溶けるため、中身が少しずつ体内に吸収されていきます。つまり、摂取したビオチンを無駄にしないで済むのです。
ビオチンは特定の病気を治療するために使われることがあり、その場合は大量投与するケースもありますが、過剰摂取による健康被害や副作用はこれまでに報告されていません。
また、すでに述べたとおりビオチンは水溶性の物質なので体内に長くとどまることはありません。タイムリリース加工のサプリを使ったとしても、ビオチンが体内に蓄積していく可能性はないので、継続摂取したことによる過剰症も起こらないとされています。
市販のサプリメントは1カプセルで5000μg(=5mg)のものが多いですが、これを一日数回摂るくらいなら、とくに健康被害は起こらないと考えられます。
ただし、ビオチンの働きについては判明していないことが多く、研究も発展途上です。思わぬ副作用がひそんでいる可能性もゼロではないので、サプリメントの使用量はきちんと守るようにしましょう。