ホスファチジルセリンは脳に関係が深い「第3のブレインフード」
ホスファチジルセリンは、近年注目を集めている「ブレインフード」のひとつです。
ブレイン(=脳)フード(食べ物)というのは、その名のとおり脳に関係が大きい食べ物のことを指します。代表的なものにDHA(ドコサヘキサエン酸)やイチョウ葉エキスがありますが、それらに次ぐ第3のブレインフードとして、現在脚光を浴びているのがホスファチジルセリンなのです。
このページでは、ホスファチジルセリンの働きとその効果、そしてサプリメントの選び方などについてご紹介していきます。
このページの目次
ホスファチジルセリンは、私たちの体を構成している「細胞」の中に含まれている物質です。
少し詳しく言うと、人間の細胞には膜があって、隣どうしの細胞との境界を作っています。その膜を構成している物質はタンパク質とリン脂質ですが、ホスファチジルセリンはそのリン脂質の一種です。
● 細胞膜の構成成分
- --タンパク質
- --リン脂質
- --ホスファチジルセリン(PS)
- --ホスファチジルセ���ン(PS)
- --ホスファチジルコリン(PC)
- --ホスファチジルエタノールアミン(PE)
細胞内のリン脂質は、約3%がホスファチジルセリンによって構成されています。たった3%なので、たいして重要な物質ではないような感じもしますよね。
しかし、ここで知っておきたいことが1つあります。それは「脳の神経細胞の膜だと、リン脂質の10%近くをホスファチジルセリンが占めている」という事実です。これは、脳の細胞にとってホスファチジルセリンが重要な栄養素だということを意味しています。
では、どういう理由でホスファチジルセリンは脳細胞に多く含まれているのでしょうか。それは、脳細胞の膜を柔らかい状態に保つためです。
もともと細胞膜は、有害な物質が細胞の中に入るのを防ぐ「フィルター」の役目を持っています。人間のからだの中で、もっとも重要な器官は脳なので、それを構成する細胞膜にも高いフィルター機能が備わっています。
しかし、そのフィルターが強すぎると、今度は脳細胞に必要なものまで通さなくなります。つまり、栄養素や酸素が細胞内に入っていけなくなるのです。また、細胞内の老廃物も外に出せなくなるので、脳細胞の新陳代謝が停滞することになります。
脳細胞のフィルターが効きすぎるのは、細胞膜が硬いことが原因のひとつです。そこでホスファチジルセリンの出番です。ホスファチジルセリンは細胞膜を柔らかくする作用があるため、脳の細胞膜にこの栄養素がたくさんあれば、フィルター機能を維持しつつ、膜の柔軟性も保てるようになるのです。
細胞膜がやわらかくなれば、酸素と栄養素が細胞内にしっかり行きわたり、脳細胞の状態も良好に保たれるようになります。
ホスファチジルセリンに期待されている効果は、次のようなものです。
- 脳の神経伝達を活発にする
- 体のめぐりを良くする
以下、この点について述べていきます。
人間の脳の中では、神経伝達物質と呼ばれる特殊な化学物質が飛び交っています。たとえば、幸福や快楽を呼びおこす「ドーパミン」や、精神の安定をつかさどる「セロトニン」などは有名な神経伝達物質です。
こういった物質が脳内で行き来することによって、感情をうまく表現したり、人の言っていることを理解したり、物事を記憶したり、といったことが正常に行えるようになります。
ホスファチジルセリンは、この神経伝達物質の流れをスムーズにする効果があります。その効果の源は、すでに述べたとおり細胞膜が柔軟になることです。脳細胞の膜が柔軟性に富んでいれば、神経伝達物質が滞りなく出入りできるようになるのです。
何らかの理由(たいていは加齢やストレス)で脳の神経伝達がうまくいかなくなり、記憶力や集中力が衰えている場合は、ホスファチジルセリンを積極的に補給するのも有効な選択肢です。実際、ホスファチジルセリンを摂取することによって脳の神経細胞が活性化することが、PET(脳断層撮影法)やEEG(二次元脳電図)を使った臨床試験で示されています。
また、脳の神経伝達をうながすために「うつ」や「ADHD(注意欠陥多動性障害)」に対しても有効なのではないか? と考えられていて、アメリカでは臨床試験のデータが集まりつつあります。もちろん確定的なことはまだ言えませんが、ひとつの知識として覚えておく価値はあると思います。
ADHDは「落ち着きがない」「衝動的な怒りにかられやすい」などの症状が現れる行動障害です。日本では、ADHDの症状を持つ子供が300万人もいると推定されていますが、実は大人にもADHDの症状はよく見られます。
細胞膜を柔らかくするホスファチジルセリンの作用は、脳細胞以外にも有効です。とくに注目したいのは赤血球の膜を柔軟にすることです。
赤血球は血液の中に含まれている物質ですが、意外なことにその大きさは毛細血管の4~5倍もあります。そんな大きな赤血球がどうして毛細血管を通れるのかというと、それは赤血球が自らの形を柔軟に変形できるからです。
しかし、赤血球の膜が硬くなるとどうなるでしょうか。当然、毛細血管をうまく通過できなくなります。そうすると体の末端に酸素&栄養素を運べなくなるせいで、さまざまな健康問題が生じる可能性が出てきます。
その反面、ホスファチジルセリンの作用によって赤血球の柔軟性・弾力性がUPすれば、血液のめぐりも良くなるため、身体のすみずみまで酸素と栄養素を供給できるようになります。
ホスファチジルセリンは、日々の食事から補給することが一応可能です。あとで述べますが、ホスファチジルセリンのサプリメントは大豆を原料にして作られています。そのため、大豆そのものを食べることはホスファチジルセリンの補給に一番良いと言えるかもしれません。
ただし、それはあくまでも日々の食事だけでまかなう場合です。効率的に摂取することを考えると、サプリメントにはまったく及びません。
ホスファチジルセリンに何らかの効果を期待するなら、一日あたり100~200mgくらいは補給したいところなのですが、この量を食事だけで摂ろうとすると、大豆を3キロも食べないといけない計算になります。それに対してサプリなら1~2カプセル飲めば済むので、圧倒的な違いがあります。
年齢を重ねるとともに細胞の膜は柔軟性を失っていきますが、それは脳細胞も例外ではありません。脳細胞の膜が硬くなると、脳内の神経伝達がスムーズにできなくなるせいで、物忘れが激しくなったり、判断スピードが鈍くなったりします。
こうした脳の老化を完全にくい止めることは不可能ですが、サプリメントを使ってホスファチジルセリンを補うことは有効な手段と考えられています。細胞膜が硬くなる原因のひとつは、加齢のせいでホスファチジルセリンが少なくなることだからです。
ホスファチジルセリンのサプリメントは、日本やアメリカのメーカーから販売されていますが、価格ではアメリカ製のサプリのほうがお得感があります。
もともと、アメリカではホスファチジルセリンの研究がさかんに行われてきました。その影響もあって、アメリカのサプリメーカーのホスファチジルセリンは価格と品質のバランスが取れているように思います。
ちなみに、日本やアメリカの市場に出回っているホスファチジルセリンは、基本的に大豆から抽出されています。そのため大豆アレルギーを持っている場合は使用することができません。
しかし、「大豆アレルギーだけどホスファチジルセリンを摂りたい!」という方もいると思います。そういう場合は、ひまわりから抽出したホスファチジルセリンのサプリを使用するようにしましょう。
(ひまわり以外でも、大豆成分フリーと記載されていればOKです)
摂取量の目安は「一日あたり100~200mg」
欧米で実施されている臨床試験では、一日につき100~300mgのホスファチジルセリンを摂取することが多いです。実際、このくらいの量を毎日しっかり摂れば、脳の状態に好影響が見こめるという結果も出ています。
ただし、この量は体格の大きい欧米人向けの摂取量です。日本人の場合、もう少し量を減らしたほうが安全かもしれません。とくに一日あたりの上限は、300mgではなく200mgと考えておくのが賢明と思います。
ホスファチジルセリンは、非常に安全性の高い物質と考えられています。実際、今までに膨大な数の臨床試験が行われていますが、重大な副作用は報告されていません。ただし、一日あたり500~600mgの大量摂取を続けた場合、胃腸障害や不眠などの副作用が発生する可能性があります。
次に、ホスファチジルセリンと他のサプリメントの併用についてですが、これは問題ありません。むしろ、うまく組み合わせることで大きな効果が見こめます。
たとえば、他のブレインフード(DHAやイチョウ葉エキス)との組み合わせです。これらの栄養素はどれも脳機能に関係していますが、それぞれ仕組みが異なるので相乗効果が期待できます。
ただし、医薬品と併用するのだけはやめたほうが無難です。今のところ医薬品との有害な相互作用は確認されていませんが、これは研究データが充分に揃っていないだけかもしれません。そのため、何らかの薬を継続的に飲んでいる方は、ホスファチジルセリンを使用する前にかかりつけの医師に相談することをオススメします。