イチョウ葉エキスは「血液の流れ」に働きかける天然成分
イチョウは3億年の歴史を持っている植物です。ほとんどの動植物が変化をくり返しながら生き延びてきたのに対して、イチョウは姿かたちを大きく変えることなく生存してきました。このことから「生きている化石」と表現されることもあります。
3億年にわたって地球環境に対応してきた過程で、イチョウは「生命を維持するための独自成分」を獲得しています。詳しくは後で述べますが、たとえばギンコライドという物質はイチョウだけに含まれている成分です。
そういったイチョウ独自の成分を抽出したエキスは「イチョウ葉エキス」と呼ばれ、主にサプリメントの形で利用されています。
このページの目次
イチョウの葉の薬学研究が始まったのは1950年代です。ヨーロッパの科学者が中心となって、これまで数十年にわたって研究が続けられてきました。
その過程で発見されたのが、イチョウ葉エキスの血流を改善する作用��す。そのなかでも、脳の血流に対する作用がいま注目を浴びています。
血流の良しあしは、脳にとって非常に重要です。「そんなの当たり前!」と思うかもしれませんが、なぜ血流が大事なのか、ちょっと詳しく考えてみたいと思います。
血液のおかげで脳が機能できる
そもそもなぜ体の中を血液が流れているのかというと、その理由のひとつは「酸素と栄養素」を運ぶためです。血液の中に酸素・栄養素が溶け込むことによって、体の隅々にまで行き渡ります。これが血液の一番の役割です。
そして、ここで知っておきたいのは「脳は酸素や栄養素を大量に消費する」という事実です。
たとえば、ブドウ糖(人間の活動エネルギーの元)について言うと、脳はブドウ糖全体の20%を消費します。しかし、脳の重さは体重の2~3%しかありません。ということは、その重さのわりにはエネルギー消費量が大きいという特徴があるのです。
またブドウ糖のほかにも、脳には必要な栄養素がたくさんあります。たとえばギャバやホスファチジルセリンなどの「ブレインフード」と呼ばれる物質。それらを脳に供給するためにも、血液の流れは欠かせません。
ちょっとおおげさかもしれませんが、血液が正常に流れているおかげで、私たちの脳は正常に機能しているわけです。
イチョウ葉エキスは「間接的に」毛細血管を広げる
では、もし血の流れが滞ってしまったらどうなるでしょうか。まっさきに脳がダメージを受けます。酸素や栄養素を一番必要とするのは脳だからです。実際、血流が完全にストップすると、3分ほどで脳に障害が発生します。そのくらい、血液の流れは脳にとって重要です。
もちろん、完全に血流が止まるなんてことは普通は起こりません。ただ、慢性的に血行が悪いという方は少なくないと思います。
血行不良の状態が長くつづけば、その影響は蓄積していきます。やがて脳の活動に影響をおよぼして、たとえば記憶力が低下したりする可能性は否定できません。
そこで注目したいのがイチョウ葉エキスの効果です。イチョウ葉エキスは、さまざまな方面から血流をサポートしますが、その中でも「毛細血管を拡張する作用」は見逃せないポイントです。脳には無数の毛細血管が張りめぐらされています。それを拡張すれば、栄養素と酸素をスムーズに運搬することにつながります。
実は、イチョウ葉エキス自体には、毛細血管を拡張する物質は含まれていません。しかし、イチョウ葉エキスを摂取すると、毛細血管を広げる「プロスタサイクリン」という物質が生成されやすくなることが、これまでの研究で明らかになっています。
つまり、間接的に毛細血管の拡張を助けるのがイチョウ葉エキス、ということです。
間接的というと、なんとなく効果が小さいようにも感じるかもしれません。しかし、イチョウ葉エキスを医薬品として認可している国(ドイツやフランス)もあるくらいです。そのことからも、効果の大きさがうかがえます。
イチョウ葉エキスの効果は、血管を広げるだけではありません。血液の成分を良好にたもつ効果もあるのです。具体的に言うと「血小板が必要以上に固まるのを防ぐ」というものです。
血小板は血液にふくまれる成分のひとつです。その役割は、出血を止めることです。たとえば、料理中に包丁で手を切ってしまっても、それが小さなケガなら放っておいても血が止まります。それは、血小板が出血部分に集まってきて、血液を固めるからです。
しかし、血小板の凝固作用が強すぎると血液がドロドロになってしまい、血行に悪影響をおよぼします。場合によっては、血栓ができてしまう可能性もあるくらいです。
(ちなみに、この影響を受けやすいのは、細い血管が張り巡らされている脳です)
ギンコライドの作用に注目!
血小板の凝結にはPAF(パフ)という物質が関わっていますが、イチョウ葉エキスは、そのPAFの活動を抑制することによって、血が固まるのを防ぎます。この効果をもたらしてくれるのは、イチョウ葉に含まれているギンコライドという成分です。
ここで重要なのは、ギンコライドはイチョウ独自の成分という点です。血流に関係するサプリメントはいろいろありますが、ギンコライドが摂れるのはイチョウ葉エキスだけなのです。言い方を変えると「イチョウ葉エキスには他のサプリとは異なる効果が期待できる」とも言えます。
内臓が弱っていると血流も悪くなる
血小板が固まりやすい人には特徴があります。そのひとつは、内臓(とくに胃や腸)に炎症があることです。
先ほど、PAF(パフ)という物質についてちょっと述べましたが、この物質は血小板を凝縮させるだけでなく、炎症を抑える働きも持っています。つまり、炎症があると、それを和らげるためにPAFが分泌されるということです。
その分泌量が適正なら問題ないのですが、量の調整がいつもうまくいくとは限りません。過剰に分泌されることもあり、それが血小板を凝縮をまねくわけです。
「内臓の炎症なんて自分には関係ない!」と思うかもしれませんが、自覚がないまま炎症を抱えているケースは多いようです。
(私の知り合いの整体師は、内臓に炎症が無い人なんていないよ!と言い切っていました)
また、年齢を重ねると内臓が弱ってくるため炎症も起きやすくなります。そのせいで血液の流れが妨げられている可能性も、心にとどめておきたいところです。
すでに述べたような「血管・血液」に対する作用があるおかげで、冷え性や肩こりなど、血行不良に起因する症状全般にもイチョウ葉エキスは有効に働きます。
また、女性特有のPMS(月経前症候群)をやわらげる効果も期待されています。
(※ PMS=月経の1~2週間前に発生する身体的・精神的な症状全般のこと)
ある臨床試験によると、イチョウ葉エキスはPMSの中でも「血行不良タイプ」の症状をやわらげるという結果が出ています。手足のむくみや体重増加など、身体的な症状が出やすい場合は、イチョウ葉エキスを使ってみるといいかもしれません。
ただし、似たような作用を持つ「ピクノジェノール」のほうが最近では人気があるようです。ピクノジェノールは、フランス海岸松から抽出される天然成分です。樹木を元にしているという点では、イチョウ葉エキスとちょっと似ています。
イチョウ葉エキスを取りあつかっているメーカーは、日本だけでも数十社を超えます。それだけ多彩な製品が出まわっているわけですが、ここで問題になるのが「何を基準に選べばいいのか?」ということです。
まず押さえておきたいポイントは、イチョウ葉エキスに含まれる成分のバランスです。具体的には、「フラボングリコシド24%、テルペンラクトン類6%」となっているものがベストです。
この比率に標準化されているイチョウ葉エ���スは、薬学的な研究でも用いられていますし、世界的なスタンダードにもなっています。
「フラボングリコシドとかテルペンラクトン類って一体なに?」と疑問に思う方も多いと思いますが、イチョウ葉エキスの成分種類のことです。その内訳は次のとおりです。(ひとつひとつを覚える必要はまったくありません)
フラボノイド | テルペンラクトン |
---|---|
ケルセチン ケンフェロール ルチン ギンケチン ビロベチン アメントフラボン など約30種類 ※ フラボングリコシドはフラボノイドに糖がくっついた物質。別名はフラボン配糖体。 |
ギンコライドA ギンコライドB ギンコライドC ギンコライドJ ビロバライド |
イチョウ葉エキスは天然の樹木から抽出される物質です。抽出方法に違いがあると、成分内容も変わってしまう可能性があります。そのため、エキスがしっかり標準化されていて、品質に信頼のおけるものを選ぶことが重要になってきます。この点は、一般的なサプリメント(ビタミン剤など)を選ぶときよりも、シビアに考えるべきです。
しかし、残念ながら日本で売られているイチョウ葉エキスは、成分量が明記してないものも少なくありません。基本的には、そういう商品は使わないほうが無難です。どうしても使用したいのであれば、メーカーに成分内容を確認するようにしましょう。
イチョウ葉エキスのサプリメントを比較表にまとめましたので、参考にしてみてください。
表(準備中)
※ 補足
イチョウ葉エキスを選ぶときには、「ギンコール酸という有害物質がどれだけ取り除かれているか?」というのも重要なポイントです。
ギンコール酸はイチョウ葉のなかに存在している物質で、アレルギーを引き起こすことが知られています。かりに、自生しているイチョウの木から葉っぱを採って食べると(普通食べませんが)、皮膚炎や胃痛が起こることがあります。その原因になるのもギンコール酸です。
ギンコール酸を完全に取りのぞく必要はありませんが、含有量5ppm以下というのがひとつの目安になっています。これよりも含有量が多いものは、選ばないほうが無難です。
ちなみに、市販のイチョウ葉製品にどのくらいのギンコール酸が含まれているか?を調査したデータがあります(2002年:国民生活センターによる調査)。それによると、検査対象の製品20個のうち、半数ほどが基準値の5ppmを上回っていたそうです。
この調査から10年以上も経過しているので、現在では状況はだいぶ改善されてい��はずです。ただ、品質に気を付けるに越したことはありません。
「どのくらい飲んだら効果的なのか?」というのは気になるところですが、イチョウ葉エキスの摂取量は明確には定められていません。
一応ドイツの製薬会社から、「一日の適量は100mg~150mg」という見解が出されています。ドイツではイチョウ葉エキスが医薬品として扱われていますので、その目安量には信頼がおけると思います。
もっと多めに摂取するケースもあるようですが、摂取量を増やせば効果も増えるのか?というと、それは疑問が残るところです。なぜなら、イチョウ葉エキスの成分は、人間の体内に長く留まれないからです。
サプリメントの成分には、体内に蓄積できるものとできないものがあります。イチョウ葉エキスは後者なので、摂りすぎた分はトイレに行ったときに排出されてしまいます。
また、有効成分が体内に長く留まれないことを考えると、一度にたくさん飲むよりも1日に何回かに分けて飲むほうがベターです。
(成分濃度をコンスタントに保つために、複数回に分けて摂りましょうということ)
効果を早く実感したい気持ちが強いと、どうしても摂取量が多くなりがちです。しかし、すでに述べたように、必要以上にイチョウ葉エキス単体を飲んでも意味がありません。
ではどうすればいいのかというと、ほかのサプリメントと組み合わせるのが有効な手段になります。つまり、イチョウ葉エキスだけに頼るのではなく、相乗効果を狙うほうが賢明ということです。
脳機能をサポートする成分としては「DHA」や「ホスファチジルセリン」が有名ですが、これらの成分はイチョウ葉エキスとは異なるメカニズムを持っています。血流に対する作用を見ても、イチョウ葉エキスが血小板の過剰収縮を抑えるのに対して、DHAは赤血球をやわらかくする作用が強いなど、異なる点が多々あります。
このような違いがあるために、両者の効果が相乗的に働き、単独で使ったときよりも大きな効果が期待できるのです。
イチョウ葉エキスの副作用に関しては、さまざまな方面から臨床研究が行われています。今のところ確認されているのは、軽い胃腸障害や頭痛、めまいなどの軽い副作用です。そのほとんどは一過性のものなので、イチョウ葉エキスの摂取をやめれば、症状も収まります。
ただし一点気をつけておきたいのは、医薬品との相互作用です。血液を固まりにくくする抗凝血剤(ワーファリンなど)を服用している方は、イチョウ葉エキスを併用しないほうが賢明です。
当ページの「血液成分を整える作用も見逃せない」ですでに述べたとおり、イチョウ葉エキスは血小板の凝縮をさまたげる働きを持っています。この働きと抗凝血剤の働きが合わさると、血液が流れやすくなりすぎて、出血リスクが大幅に増えます。
血流をうながしたり、血栓を防いだりする薬を別にすれば、イチョウ葉エキスと医薬品を併用することは問題ないとされています。ただし、持病をお持ちの方はかかりつけの医師に相談し、そのアドバイスに従うことをお勧めします。